格別の味わい!1
もう食べていいかな、まだちょっと早いかなと気をもむ時、することは誰でも同じで、必ず手を出したくなる。
つい手でさわったり、そおっと両手に乗せてみたくなる。
するとどうだ。
緑色の時の硬い感触はなくなって、冷たい、滑らかな手ざわりがそこにある。
事実、果実は蝋質物でお化粧までしているのである。
ところが、不慣れのうちは何でも同じだがそうはいかない。
もう三、四日。
明後日ごろかな。
どうかな。
やや、ついうっかりしていたら、食べごろを通り越してしまったぞ。
こんなにして毎日気をつかって……。
だからこそ格別の味わいなのだと思う。
昭和五十年の九月半ば、中央・信越線経由で新潟県に入った。
旅の目的は野菜 種のほかにブドウの勉強で、柏勝崎へ泊まった翌日は、月潟村の野沢さんという農家を訪問した。
話の主対象はブドウの鉢植え作りのことだったのに、何かの拍子に話題はひょいとセイヨウナシに移ってしまった。